一般就労を目指す人のためのミニコラム「法定雇用率ってどうやって決めているの?」

TECTEC中田です!

就労系障害福祉サービスを利用している人の多くは「一般就労」を目標にしていると思います。

なかでも「障害者雇用枠」と呼ばれる、障害者を対象とした採用枠が人気です。

障害者雇用枠で就労した人には、企業側も無理な仕事をさせないように配慮しますので、健常者と同じ条件での就労に比べて働きやすいのが事実。

そしてこの障害者雇用枠なのですが「法定雇用率」という国が定めた基準によって、企業の規模に応じた雇用人数が決まっています。

障害者雇用義務の対象となる企業および法定雇用率のデータは年々変化していきますので、実はネットで調べても書いてあることがバラバラだったりします。

(古い情報も残ってしまうのがネットですからね)

厚生労働省が公式に発表している2021年3月より、従業員数43.5名以上の企業は障害者を雇う義務が発生するようになりました。

これが2024年4月からは「従業員40名以上の企業」に対象が拡大し、さらに2026年7月からは「従業員37.5名以上の企業」が対象となる予定です。

法定雇用率に関しても、1987年まではわずか1.5%でしたが、1988年には1.6%に改定。

以降は数年おきに上昇し続けており、2024年4月現在では2.5%、2026年7月をめどに2.7%まで引き上げられることが決定しております。

40名の企業で法定雇用率2.5%を達成するには、40÷0.025=1で、最低1人の障害者を雇用する義務があるというわけです。

この法定雇用率が上昇するほど、企業で採用される障害者も増えていきますので、障害者が働きやすい社会の実現に近づきます。

(ちなみに法定雇用率制度は1976年から始まりましたが、当初は身体障害者のみが法定雇用カウントの対象で、知的障害者は1988年、身体障害者にいたっては2018年からようやく対象となりました)

さて、今回は「法定雇用率ってどうやって決めているの?」という疑問についてです。

障害者枠での一般就労を目指す人は多少なりとも法定雇用率の存在を知っていると思いますが、その数値の決め方まではあまり考えたことがないかもしれません。

決して適当に決めているわけではなく、厳密な算定方法によって導き出されています。

法定雇用率の計算式は複雑なのですが、ざっくり書くと

(働いている障害者+失業中の障害者)÷(働いている人+失業中の人)

です。

たとえば(本当にたとえばですが)日本で働いている人が6000万人、失業中の人が200万人、働いている障害者が100万人、失業中の障害者が80万人だとすると

(100+80)÷(6000+200)

=180÷6200

=0.0290322581…

=およそ2.9%

ですので「法定雇用率を2.9%にしよう」ということになります。

2018年4月以前はこの「働いている障害者」と「失業中の障害者」のなかに「精神障害者」は含まれていませんでした。

つまりは精神障害者が障害者雇用で働くというケースをそもそも想定していなかったわけです。

精神障害者が計算式の中に含まれるようになったことで、法定雇用率がさらに上昇したという経緯があります。

また、2004年から基本的に廃止になったものとして「除外率設定業種」があります。

これは船舶の運航、金属鉱業、幼保連携型認定こども園など、専門性の高い仕事や肉体的・精神的に負担のかかる仕事に関しては「障害者の雇用が難しい」という前提で法定雇用率を計算するための調整項目です。

完全に廃止されたわけではなく、経過処置として当分は業種ごとに除外率を設定しているとのことです。

ちなみにですが「国・地方公共団体等」や「都道府県等の教育委員会」は民間企業の法定雇用率より高く設定されています。

民間企業の法定雇用率が2024年4月から2.5%になったことを最初に解説しましたが、同じタイミングで国・地方公共団体が2.7%、教育委員会が2.6%に改定されていますので、公務員などのほうが若干障害者枠の比率が高いことになります。

法定雇用率を達成しなかった企業には国から「障害者雇入れ計画」の作成命令や注意勧告があり、特に常用労働者数が100人を超える企業が未達成の場合は「障害者雇用納付金」を毎月5万円納めなければいけません。

もうひとつ「法定雇用率を超過して障害者を雇用した場合はどうなるの?」という疑問があると思います。

「事業人数が100人以下で障害者を一定数以上雇用している企業」においては、法定雇用率を超過して障害者を1人雇用するごとに支給される「障害者雇用報奨金」という制度があります。

2025年4月からは「障害者雇用報奨金」が月額21,000円支給されることになりました。

いずれにせよ、一般就労を目指す方にとって障害者雇用に関するニュースや制度の改定は自分自身の生活と直接関わってきますので、気が向いたときにでもチェックしておくことをおすすめします。

※補足

本文中のデータ・最新情報・制度の詳細など諸々の内容は以下のサイトを参考にさせていただきました。

<厚生労働省>

令和5年 障害者雇用状況の集計結果

第123回労働政策審議会障害者雇用分科会(資料)

<独立行政法人 労働政策研究・研修機構>

障害者雇用状況の推移

<サプナ社会保険労務士法人>

障がい者雇用率が段階的に引上げ 2025年度には2.7%に

<株式会社エスプールプラス>

【2024年最新】法定雇用率とは?障害者雇用率制度の現状、今後の動向や計算方法、除外率などを解説

<チャレンジラボ>

障害者の法定雇用率、段階的に引き上げ3年後に2.7%に、厚生労働省が発表

<障害者雇用ドットコム>

2023年(令和5年)からの障害者雇用率の引き上げ、どうなる?

<障がい者としごとマガジン>

納付金は「罰金」ではない|障害者雇用促進法の本当の罰則規定

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