TECTEC中田です!
「あの人に挨拶をしたら、無視された…」
「質問しても、答えてくれなかった…」
「何をしてほしいのか、ちゃんと言ってくれない…」
相手にそのような態度をとられると、どうしても「嫌われたのでは?」「愛想が悪い人だなあ」と勘違いしてしまいがち。
ですが、もしかしたらその人は「場面緘黙症」かもしれません。
場面緘黙症とは、家族や気を許した友人のような安心できる相手とは普通に話せるのに、学校や職場など特定の場面では極端に話せなくなってしまう状態を指します。
家族とは普通に喋れるのに、学校ではほとんど喋らない人などはその可能性があります。
本人には会話スキルも言語能力も備わっているのですが「話したいのに話せない」という強い不安や緊張が原因で、言葉が出なくなってしまうのです。
多くの場合、子どものころに症状が現れ、大人になるにつれて自然に克服できるケースもありますが、そのまま改善されず「コミュニケーションが苦手な人」と見なされることもあります。
そのメカニズムは完全に解明されていませんが「社交不安障害」の一種とされています。

場面緘黙症と「内気な性格」は混同されがちですが、単なる恥ずかしがり屋や人見知りとは異なります。
たとえば恥ずかしがり屋の子どもは時間が経てば慣れて話せるようになりますが、場面緘黙症の子は、時間が経っても言葉が出ないことがあります。
周囲の人が無理に話しかけたり「なんで黙ってるの?」などと問い詰めたりすると、かえって緊張が高まり、症状の悪化を招きます。
場面緘黙症の当事者は、次のような心理的背景を抱えていると考えられています。
・極度の不安や緊張:特に「失敗したくない」「変に思われたくない」といった感情が強い
・過去のトラウマ:人前で話したときに笑われた、否定された経験など
・発達障害との関連:自閉スペクトラム症や社交不安障害との併存による、意思や感情を言語化することへの苦手意識
つまり、場面緘黙症は「性格」や「気の持ちよう」で片付けられるようなものではなく、医学的・心理学的な理解と支援が必要な状態です。

<場面緘黙症のある人にどう接すればいい?>
話すことが難しい人に対して、「もっと頑張って話してごらん」と無理に言葉を引き出そうとすることは逆効果です。
場面緘黙症は「努力不足」ではなく「環境に左右される不安障害」であり、周囲の理解が改善への第一歩となります。
支援の一例としては、
筆談を取り入れる:話すのが難しい人には、紙やスマートフォン、PCのチャットツールを使ってコミュニケーションをとる方法があります。
ジェスチャーや表情を読み取る:本人からの非言語的なサインを尊重する。
SST(ソーシャルスキルトレーニング)などの支援を活用する:段階的に話す練習をする支援方法が有効です。
安心できる環境を整える:静かな場所、少人数、決まった人との関係など、安心感を得られる条件を意識しましょう。
TECTECをはじめ、就労支援系福祉サービスを提供している多くの事業所では、場面緘黙症の傾向を持つ方にも配慮したサポートを行っています。
「喋れないから働けない」と思ってしまう方もいるかもしれませんが、大切なのは「喋れるか」よりも「どのように工夫して意思を伝えるか」「自分に合った働き方を見つけられるか」です。
コミュニケーションが苦手な人の“見えにくい困りごと”を、一緒に解決していきましょう!
※本文中のデータ・最新情報などは以下のサイトを参考にさせていただきました。
<日本場面緘黙研究会>
<社会福祉法人 恩賜財団 済生会>
<NHKハートネット>
<はぐめいと>
場面緘黙症とは?【発達障害/発達の困り/場面緘黙/かんもく】
<コペルプラス>