発達障害の人は「疲れやすい」ってホント?

TECTEC中田です!

先日SNSを眺めていると「体力がある人」と「体力がない人」の違いについて、実例を挙げて語っている投稿を見かけました。

たとえば「貴重な休日をいかに充実して過ごすか」という問題。

体力がある人は休日の朝からランニングで体づくりを行い、そのあと友達とランチをして、美容院に行き、映画を観て、夜は飲み会に…と、時間を有意義に効率よく使えます。

一方で、体力がない人だと、起きて映画館に行き、映画を観るだけで疲れてしまい、そのまま帰宅して一日が終わり…となるそうです。

投稿者はこれを「人生の差」と表現しています。

もちろん、体力がないからといって人生を損するわけではありません。
一日中自宅でネットやゲームをしていたとしても、それが自分にとって気分をリフレッシュする行為であれば、それはそれで充実した生活スタイルです。

ところで、私もそうなのですが、発達障害を抱えていると

「他の人と同じことをしていても、自分だけすごく疲れてしまって、それ以外のことができなくなる」

といった経験が特に多いように感じます。

よく「発達障害の人は疲れやすい」といわれますが、なぜそうなるのでしょうか…おそらく体力だけの問題ではないはずです。

疲れて何もできなくなる、すぐ疲れるため仕事や行動が遅くなるのを「甘え」「努力不足」と怒られてきた人もいるでしょう(私もそれが悩みでした)。

発達障害の人が疲れやすい傾向にある、その原因を説明できれば、周囲からの理解も得やすくなるかもしれません。

発達障害を持つ人が「疲れやすい」と感じるのは、単なる体力不足や怠慢ではなく、

「日常生活の中で無意識に多くの神経を使い続けるため、心身に深い負荷がかかる」

という説が有力です。

<周囲に“合わせようとする”過剰適応>

ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)の方は「空気を読む」のが苦手といわれています。

そのため、一般の人が無意識のうちにできている「空気を読んで行動する」「相手に合わせて発言する」といったことを、常に頭の中で意識しながら処理しなければなりません。

空気を読むのが元々得意ではないのにそれを自分自身に課していることで、心的エネルギーを大量に消費し、常に疲れた状態に陥りやすくなるのです。

ASDの方が「空気は読むのではなく解読するもの」と、常に脳をフル回転させて分析し続けた結果、過度に疲弊する例も実際にあります。

日本人のコミュニケーションは「同調圧力」が強いといわれており、もしかしたら周囲の目を気にせず、自分の意思を貫く生き方のほうが本質的には正解なのかもしれません。
とはいえ、全く相手のことを考えずに行動してしまうと単に迷惑をかけてしまったり、相手の心を傷つけてしまったりすることも往々にしてありますので、難しいところです。

<ADHDにおける多動・衝動と過集中>

ADHDでは「多動性」によって常に体を動かし、エネルギーを大量消費するため、一般の人より疲労が溜まりがちです。

クリエイティブな仕事をしている人がよく「歩き回っているときのほうが良いアイデアが思いつく」と語っているように、一見無駄に見える動きも実は自分の中でリズムをとっていて脳の活性化に繋がることがあるのですが、なかなか理解されづらいものがあります。

その一方で、してはいけないことをついしたくなる「衝動性」を抑えるだけでも、かなりの神経をすり減らしてしまいます。
「立ち入り禁止」と書いてある柵をつい乗り越えてしまいたくなる、などがその典型例です(もちろん実際にしてはいけません)。

また、反対に「過集中」に陥ると、時間を忘れて作業に没頭するため休憩をとるタイミングを逃してしまいます。
過集中モードが終わったあとはドッと疲労が押し寄せ、しばらくの間は全く動けなくなることも。

<感覚過敏による精神の疲弊>

視覚・聴覚・触覚などが過度に敏感な「感覚過敏」の特性を持っている人の場合、

・蛍光灯のちらつきで頭痛に
・街中の雑踏音がストレス源に
・強い香りや衣服の肌触りが不愉快

などの環境刺激が積み重なることで、無意識のうちに神経をすり減らし、結果として疲労感や倦怠感を引き起こします。

<発達性運動協調障害(DCD)による肉体的負担>

DCD(発達性協調運動障害)とは脳機能の発達や構造に問題があることにより、運動や動作にぎこちなさが生じるのをはじめ、身体のバランスがとれず姿勢が乱れる、力加減の調節ができずにものを壊してしまう、指先を使った細かい作業が困難といった現象が強くみられる状態です。

発達障害の人のなかに「体育やスポーツが苦手」「手先が不器用」という方が多いのもDCDが原因の場合があります。

つり革につかまる、靴ひもを結ぶなど「当たり前」に見える動作も、DCDのある方は人一倍苦労するため、疲れやすくなってしまうのです。

以上、発達障害の人が疲れやすくなる主な原因を紹介いたしました。

今回挙げた以外にも「慣れない情報処理による精神的負担」で疲れる、という可能性もあるようです。

本来マルチタスクが苦手だけど、仕事をこなすために「複数の情報を同時に処理する」作業を頑張った結果、脳内に過度の負担がかかり、一般人よりも極端に疲れてしまいます。

これらの原因は、冒頭で述べた「体力がある人」から見れば「それこそ体力をつければ解決するのでは?」と安易に思われがちですが、脳の構造上の問題もあるため、本人の努力ではどうしようもない側面も。

必要なのは「疲れやすい」という自己の特性を理解し、受け入れることです。

そのうえで、適度に休憩を挟む・無理なスケジュールを設定しない・調子の良いときこそはしゃぎすぎないように自制する、などの対策を立てれば、いざ動かないといけないときに「疲れて何もできない」という状態になることをある程度防げるかもしれません。

休日にランニングして、映画を観て、友達と遊んで、資格の勉強も…というのは、あくまでも理想です。

まずは少しずつ、自分の体力の範囲内でできることを増やしていきましょう!