対談:福祉×クリエイティブを考える
〜Vol.1福祉の世界で職業の選択肢が少なかったのはなぜか?〜

株式会社シーアイ・パートナーズ 代表取締役CEO 家住 教志
×TECTEC代表取締役/TECTECスクール天王寺校長 浦久保 康裕

TECTECの浦久保です。毎回、各方面でご活躍のゲストをお招きして「不自由を自由に」をテーマに対談するこの「TECTECラボ」。今回のゲストは、TECTECスクール事業をご一緒させていただいている株式会社シーアイ・パートナーズのCEO・家住教志氏です。

福祉の世界はなぜ、職の選択肢が少ないのか?

浦久保(以下:浦):2021年の夏頃だったかな?家住さんと初めてお会いしたのは。そこから怒涛のようにいろんな方々を巻き込見ながら、2022年春、TECTECスクールを産声を上げました

家住氏(以下:家)そうですね。出会いからスクール開講、そして約10ヶ月に渡る事業展開、
本当にあっという間でしたよね。しかも中身が濃い(笑

浦:本当にそうですね(笑

浦:そもそも、「なりたい」という思いを抱えた人の願いを叶えてあげたい、
エンターテイメント×クリエイティブで実現していきたい、
そして「不自由を自由に」していきたい、という理念のもとTECTECプロジェクトは生まれたんだけど、その事業第一号がこのTECTECスクールでした。
実は常日頃、福祉業界を傍からみていて思っていたことがありまして。
それは、職業選択の幅の狭さ。相談に行く先も、習得する場所もないようにお見受けしています。
デジタルネイティブがどんどん育っているいまの時代、なぜ教育現場で、「出口」の手前となるところで「選択肢」がないのか?
家住さんはどう思われますか?

家:私もかねてから、まったく同じ問題に着目していました。
自分の子どもが障害を持って生まれた時に、将来どうやったら自分のなりたい姿になれるのか、
生きていけるだけの収入を得られるのか?その答えを模索してきたんですね。だからこの業界に入ったんです。まさに浦久保さんが今おっしゃった通りの疑問を抱いていたんです。

家:これまでずっと福祉業界を見てきて思うのは、日本ならではの同質化社会が背景にあるなということ。自分たちと「違う」人を分ける風潮がある。例えば外国人が苦手、LGBTQが理解できない、とか。

例えば支援学校での学びって、最初はいいんですが、本人たちの能力・成長曲線にあわせる汎用性までは、まだまだ現場で持ち合わせていない。一度カテゴライズされてしまうと、もうずっとそのままいってしまって、二度と戻せなかったりするんですよね。
そのまま型にはめ込まれて成長してしまう。
成長にあわせて、進路や学ぶべき場所を変えることもない。むしろ変えてもいいことすら、知られていないケースも少なくない。結果的に、可能性が潰されてしまう子どもたちも数多く存在する。
じゃあなにか違う仕組みがつくれないかな、と考えたのが
このTECTECスクール事業をやろうと思ったキッカケです。

不自由を抱える人たちの前にある3つの「壁」

浦:すごく根深い問題ですよね。
でもこういう問題は、いわゆる健常者が通う学校でも大なり小なりはあることで。
昔ながらの縦割り教育は、なかなか変わりにくい。
でもやっぱり両者を比較してみると、どうしても福祉領域にいる子どもたちのほうが、
圧倒的に環境の変化が少ない。
そこはどうしてだとお考えでしょうか?

家:障害があることが幼い頃からわかっている子は、障がいが原因で出来ないのか、単に成長がおそいのか、実は判断が難しいんです。だから小さい頃は、両者の違いを見失いがち。適切な振り分けができていないんですね。
支援学校の先生は教育委員会の決定によって配属されるので、通常学級希望の先生も多く、特別支援教育を目指して学んできた先生は半数以下という学校も少なくありません。そのため、先生たちも一緒に学びながら進んでいるのです。その状況をきちんとふまえて、子どもたちにあわせた個別対応をしていく必要があるんです。。

浦:ではTECTECスクールのような学びの場ができたことは、
彼らの可能性を広げられるようになった、と思って良いのでしょうか?

家:もちろん!支援学校だけじゃなくて、不自由さを抱えている人すべてにとって可能性が広げられると思っています。
支援学校って実は、進路選択に「進学」という選択肢がないんですよ。推薦枠もない。
一般高校に進学したっていいんですが、18歳になるまでその事実を知らないので、気づいたときには選べるルートから外れている。

浦:まとめると、
・教育システムの問題と、支援学級に対する教員の知見不足
・子どもたち自身がそもそも選択肢を知らない

この大きな2つが問題だ、と。

家:あともうひとつ、「セルフアドボカシー(権利擁護)」があると思います。
保護者自体が進学情報を知らないんです。
例えば、中学は支援学校だったけど、高校は一般高校に行けば選択肢が広がる、
または専門学校、という道もあるよね、など進路選択の想像がつきにくいんです。
それは家庭の事情で選べないケースもあります。
例えば、親御さんご自身も障害をかかえている、など。
仕組みも知識も知らないので、
親御さんがそのチャンスや情報を掴みきれてない社会課題は、本当になんとかしてあげたいですよね。

大切なキーワード、それは学校と福祉、医療の「一体化」

浦:持って行き場のない問題が、従来の教育体系でもない、福祉の現場でもない場所に集まることで、これから生きづらさを抱える子どもたちの職業選択の課題(職業選択の問題解決)解決に繋がりそうですよね。
しかも健常者と言える人たちにとってもきっとプラスになる。
社会がもとめている多角化したニーズを解決しそうだと感じました。

ところで、2023年には子ども家庭庁が発足します。これからの未来に向けて、
いま我々民間企業が担う体制って、どんなカタチだとお考えでしょう?

家:学校と福祉の一体化、これに尽きるかと思います。
つまり、ちゃんと福祉面を考慮した進路相談を実現する、それを託せる福祉事業を学校現場にいれていく、などして学校と一体化していかないといけないとおもうんですね。
福祉と教育って切っても切れない関係だからこそです。これは療育という観点から、医療と福祉も一緒だと思っています。福祉も医療に寄りますし、医療も福祉に寄らないといけないと思います。リハビリのように、ハイブリット化がもっと必要なんじゃないかと思います。
学校の中にちゃんと医療と福祉の力が入っていくようになれば、それはもはや国家規模の課題解決ともいえますね。ちゃんと障がいのある方の育成、医療費の削減なども考えるのであれば、なおさらハイブリットなサポート体制が必要かなと思っています。

浦:そうですね、教育現場だけ、学校という単体の枠の中で解決しろと言われても、今の時代の変化に対応するのはかなり難しいものがありますよね。
これからTECTECがプラットフォームとなり、集まっていくであろう知見を、学校現場や保護者の皆さんにいかにフィードバックしてけるのか、そこが大きな課題でありミッションなんじゃないかと感じています。

家:そうですね。TECTECは<福祉が教育に寄ったから成り立っているカタチ>ですよね。逆にビジネスが福祉に寄ったから出来たカタチとも言える。

浦:はい、まさに子どもたちに対する新しい教育のスキームですよね
でも、なぜ本当に今までなかったんでしょう…?

家:やはり、福祉業界特有の収入の少なさからだと思います。
だからビジネスのエキスパートがこの業界には来てくれない。中で仕組みを作り切る人材が入ってきづらいんです。優秀な人材が福祉業界を目指す、という社会を作らないダメですよね。

→次回「福祉×クリエイティブを考える
〜Vol.2「異業種コラボだからこそ解決できる理由」
に続く

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