移動支援

「移動支援」を活用して外に出よう

「あの映画を観に行きたいけど、街まで1人で出かけるのが不安…」

「美味しそうな飲食店を見つけたけど、他人と喋るのが怖くて注文すらできないかも…」

そのような場合には、障害福祉サービスのひとつである「移動支援」を利用できる場合があります。

移動支援は、屋外などの移動が困難な障害者(身体・知的・精神)の外出に同行するなどの支援によって、地域での自立した生活や社会参加を促すことを目的としています。

冒頭で例に挙げた映画館で映画を観たり、美術館や水族館に行くといった文化的活動・余暇活動に利用できるのが特徴です。

移動支援は基本的に通称「ガイドヘルパー」と呼ばれる「移動介護従事者」の資格を持った人が障害者に付き添い、屋外移動のための介助を行います。
(資格取得の際の養成課程では「移動介護従業者」と表記されています)

移動支援を利用できる場所は自治体によって異なりますが、原則として「社会生活上必要不可欠な外出」および「余暇活動としての外出」であればガイドヘルパーとの同行が可能です。

<社会生活上必要不可欠な外出>

・選挙に行く
・銀行にお金をおろしにいく
・散髪をする
・子供の授業参観に出席する
・身内の冠婚葬祭
・地域のボランティア活動

などがあります。

どれも社会生活において大切ですね。

ただし、「近所のスーパーに生活必需品を買いに行く」などは、自治体によって移動支援とみなされない可能性も。

「日常生活に必要不可欠な外出では…?」と思うかもしれませんが、普段の買い物に関しては「居宅介護」における買い物同行など、別の福祉サービスが優先される場合があるからです。

また「定期的な通院」に関しても、生きていくのに必要不可欠な外出ではありますが、自治体によっては移動支援ではなく、居宅介護における「通院介助」のサービスが優先されます。

このブログを読んでいる方の中には現在、就労移行支援や就労継続支援などの就労系福祉サービスを利用中の方も多いと思いますが「通勤や営業行為に伴う外出」は残念ながら移動支援の対象外です。
従って、たとえば就労継続支援A型事業所に通所する際、ヘルパーに同行してもらうことは原則としてできません。

ですが、仕事や職業訓練が終わったあと、帰宅する途中で何らかのトラブルが起こり、単身での移動が困難になった…という時には移動支援を利用できる場合もあるようです。

このあたりに関しては、実際のところ各自治体でかなりルールにばらつきがありますので、移動支援の利用を申請する際には窓口等で「サービス対象となる移動範囲」をしっかりと確認するようにしましょう。

ちなみに私が昔住んでいた自治体では「区役所」への同行も移動支援ではなく別のサービス(介護保険)などが適用されていました。

全国でルールを統一してくれれば楽ですが、「地域特性に応じて柔軟に対応する」ほうが喜ばれることもありますので、難しいところですね…。

<余暇活動としての外出>

・映画館、美術館、水族館など
・テーマパーク、遊園地
・飲食店、百貨店、ショッピングモール
・コンサート、リサイタル、演劇
・公園、観光地、歴史スポット

などがあります。

特に映画館や美術館などは障害者手帳のお持ちの方であれば割引対象になる場合が多いので、芸術や文化に触れるよい機会です。

また、先ほど「生活必需品の買い物」は移動支援に含まれない場合があると述べましたが、百貨店で最新の電化製品を購入する、テーマパークでお土産を購入するなどはおおむね移動支援の範囲内とみなされています。
(こちらも自治体によって異なる場合があるので、念のために確認しておきましょう)

コンサートなどに関しても、クラシック音楽であろうと激しいロックバンドであろうと内容を問われることはありませんが、公序良俗に反するイベントに参加することはNGです。

余暇活動の際に移動支援を利用する人は、仕事が休みの日に1日じゅうヘルパーに同行してもらい、1人ではなかなか移動できない遠い場所に日帰り旅行するケースも多いようです。

利用の上限は原則として1日8時間と定められています。
8時間を超える場合は労働基準法に基づいた契約が必要となり、また費用も国からの補助はなく実費となる可能性があります。

自治体によっては、事前に旅行計画を役所の窓口に申請すれば宿泊を伴う移動支援もできるようです。

<ガイドヘルパーの交通費や食事代はどうなる?>

自分の好きな場所へ遊びに行くとなれば、交通費をはじめ何かしらのお金が必要となります。

映画館の入場料、映画を観終わったあとのカフェ代、そして映画館からカフェまでの移動代などは利用者とガイドヘルパーのどちらが負担するのでしょうか?

移動支援にかかるガイドヘルパー側の支出に関しては「利用する介護事業所による」というのが一応の回答となります。

ですが、基本的にはガイドヘルパーの「同行中に生じた」移動費や食事代は100%利用者が出すという事業所がほとんどです。
なかには「数百円までならガイドヘルパーが自己負担するが、決められた額を超えた場合は利用者が負担する」というケースもあります。

最寄りの介護事業所に移動支援をお願いする際には、どこまでが自己負担かを念のために聞いておくのが無難です。

捕捉ですが、公共交通機関以外の手段を使ってガイドヘルパーと移動することは大半の自治体で禁止行為となっています。

代表的なものが「自動車」です。

マイカーにガイドヘルパーを乗せて自分で運転する、もしくはガイドヘルパーに運転してもらって移動するのはNGと考えてください。

また、タクシーでの移動に関しては「可能だが、タクシーに乗っている間は移動支援の業務外」とみなす自治体が多いとのことです。

<ガイドヘルパーを待たせておくことはできる?>

たとえば
「映画館に行くまでの道のりや人混みが怖いだけで、映画自体は1人で鑑賞できる」
「親族の結婚式に同行してほしいが、式場の中まで支援を受ける必要がない」
と判断したとします。

この場合、ガイドヘルパーの方は外で待っておくことになり「支援を受けていない時間」とみなされます。

「だとしたら、映画を観ている間は別の場所で待っておいてもらえれば、入場料は1人分しかかからないのでは…」
と思われるかもしれませんが、そもそも収入が発生しない状態でずっと待機してくれるガイドヘルパーがいるかどうかが問題です。

銀行や役所の手続きで、わずか数分で終わる場合はまた別かもしれませんが、数分であれば結局目の届く場所にいてもらったほうがよいということになります。

移動支援を利用する際にはガイドヘルパー側の労働環境に十分配慮するようにしてください。

利用者とガイドヘルパーがお互いにストレスを感じることなく、快適に移動支援を利用できるようにしていきたいですね。

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