TECTEC中田です!
TECTECでデザインなどを学びながら一般就労を目指す方のなかには、特にクリエイティブな職種にこだわらず「自分に向いていて、やりがいのある仕事」を希望している人も多いと思います。
仕事を探しているとき、比較的求人数が多く、視野に入りやすいのが「接客業」という選択肢。
慢性的な人手不足の業界も目立ち、特にアルバイトからであれば未経験でも採用されやすい傾向がありますが、お客様への対応がメイン業務となるため、コミュニケーション能力が必要です。
そのため、人見知りで会話が苦手なタイプの発達障害者にとっては難しく感じるかもしれません。
しかし、発達障害を抱えているからといって接客業に向いていないわけではなく、むしろ特性を活かせる場面もあります。
今回は、発達障害者が接客業で働くためのポイントについて解説します。

小学生に「将来なりたい職業」を尋ねると、宇宙飛行士やプロ野球選手、お医者さんなどが人気です。
実はこれらの職業に就くにも、高度なコミュニケーション能力が必要とされます。
宇宙船内では複数人で協力して様々な実験や作業を行いますし、野球の試合もチームで勝利を目指しますので、仲間との意思疎通が欠かせません。
お医者さんにいたっては、毎日何十人という患者さんと接しますよね。
一人でYouTuberやVTuberになれば人と接しなくて済む…これはある意味事実です。
ですがそれも「人と直接関わらない」というだけで、お金を稼ぐには自分の動画に対する感想コメントなどを参考にして視聴者のニーズを把握しないといけませんし、他人がその動画を好きか嫌いかという「感情」はいいね数や再生回数などの「数字」にはっきりと表れます。
ある意味、顔が見えるコミュニケーションより難しいかもしれません。
この世に存在する職業のほとんどは、仕事内容に「人と接する」要素が含まれるのです。

<発達障害の特性別にみる「接客の仕事」をする際の課題>
発達障害には大きく分けて以下の3タイプがありますが、それぞれの特性によって、接客業での苦手な場面も異なります。
ASD(自閉スペクトラム症)の特性
・空気を読むのが苦手
・暗黙のルールを理解しづらい
・こだわりが強い
接客業での課題:
お客様からメニューにないものを注文される、予約時間に来店しなかったが電車が遅延しているので少し待ってあげる、など「マニュアル外の対応」を求められると戸惑うことがある。
ADHD(注意欠如・多動症)の特性
・注意が散りやすい
・忘れ物やミスが多い
・衝動的に行動しやすい
接客業での課題:
お客様から聞いた注文を忘れてしまう、レジの計算間違いなどうっかりミスが多い。また、調理・テーブルセッティング・皿洗いといった各作業の優先順位や段取りを覚えるのが苦手。
LD(学習障害)の特性
・読み書きや計算が苦手
・指示を覚えるのが難しい
接客業での課題:
メニューやレジ操作の暗記に苦労してしまう、マニュアルの内容が理解しづらい

<発達障害の人が接客業で働く際のポイント>
1. 無理をしすぎない環境を選ぶ
接客業は「何分以内に商品を組み立てる」「何時間以内に資料を作る」などの仕事と違い、リアルタイムの判断が求められる場面が多くあります。
発達障害者のなかにはそのような「即座の判断」が苦手な人も。
また、人手不足の際には「レジをしながら料理も運んで、電話応対も…」というようなマルチタスクが生じる場合があります。
問い合わせの多いコールセンター・忙しい飲食店や宿泊施設など、自分のペースで働くのが少し難しいと思われる職場で働く際には、採用担当者に前もって相談しておいたほうがよいでしょう。
2.マニュアルが曖昧な部分を解決する
たとえば同じ飲食店でも、オーナー(店長)の頭のなかに決まり事がある個人経営店より、マニュアルが全て明文化されているチェーン店のほうが働きやすいという人もいます。
また「この作業を適当にやっておいて」「あのお客様が帰るから見送ってあげて」など、基準がしっかりと定まっていない指示に不安を感じる人は、具体的に「お店の入口まで見送るのか、エレベーターの前まで見送るのか」といった疑問を最初に解決しておく必要があります。
ですが、なかには質問してもあまりはっきりと答えてくれず「先輩の仕事を見て仕事を覚える」タイプの職場も存在しますので、やはり事前に「発達障害の特性に対してどこまで配慮してもらえるか」を確認しておくのが無難です。
3.苦手な業務があることを周囲に知らせておく
発達障害の特性によっては、どうしても苦手な業務が出てきます。
たとえばお客様にお釣りを渡すときに間違えてしまう、大きな声のお客様が怖い、などです。
これらは訓練によって克服できる場合もありますが、それまではレジ業務を減らしてもらう、裏方の業務を中心にしてもらうなど、適性に応じた業務分担ができるか相談してみるとよいでしょう。
そのお店に来るお客様の雰囲気が苦手という場合、さすがにお店側からお客様に配慮を求めるのは簡単ではありません。
ですが、最近では名札に「他のスタッフを呼ぶ場合があります」などのコメントを書くことにより、お客様側に「接客対応が苦手なスタッフである」と知らせておくなどの工夫でトラブルを未然に防いでいる障害者雇用の職場もあるようです。

デスクワークや製造業など「職場に外部の人が訪れることがあまりない」仕事と違い、接客業では初めて来店するお客様にも当然接客を行います。
知らない人といきなり接する際に「緊張して声が出ない」という人もいるでしょう。
新規にオープンする飲食店やカラオケ・映画館・ホテルなどで働く際には、スタッフ同士が交互にお客様役になって接客の練習をする「オープン前研修」を実施しているところも。
知っているスタッフ相手に接客する練習を事前にこなしておけば、いざ実際の接客になったときの緊張は多少和らぐかもしれません。
また、特に飲食店などでは「まずスタッフ同士が打ち解けて仲良くなる」ことも大切。
働く前は極度の人見知りでも、同じ趣味を持ったスタッフと休憩時間に楽しく会話するうちに、お客様に対しても明るい態度で喋れるようになった、という人が私の身近にいました。
比較的接しやすい人とコミュニケーションをとる練習から始めて、徐々にステップアップしてみてはいかがでしょうか。
※本文中のデータ・最新情報などは以下のサイトを参考にさせていただきました。
<障害者雇用事例リファレンスサービス>