TECTEC中田です!
「声は聞こえているのに、内容が頭に入ってこない」
「相手の言葉の意味が瞬時に理解できず、何度も聞き返してしまう」
「騒がしい場所や、複数人の会話が聞こえる状況だと、極端に聞き取り能力が落ちる」
こんな経験をしたことはありませんか?
通常の聴力検査では異常が見つからないのに、聞こえてきた言葉を頭で処理する段階でつまずいてしまう状態を
「聴覚情報処理障害(APD/聞き取り困難症)」
と呼んでいます。
近年、日本でも少しずつ知られるようになってきました。
※海外では「LiD」(Listening difficulties)という名称と併用することが増えているようですが、今回の記事では「APD」に統一させていただきます。
APDは単独で見られることもありますが、発達障害のある人に併発するケースが多いという事実も分かっています。
実際に、発達障害の方のなかには「聴覚情報の処理が苦手」という困りごとを抱えている人が少なくありません。
そのため、ASDやADHD、学習障害(LD)の診断を受けている人が「人の話を聞き取れない」と感じるとき、その背景にAPDが隠れている可能性もあるのです。

人間は耳から入ってきた音の情報を脳で処理して理解しますが、この過程のどこかで問題が生じると
「言葉がぼんやりとしか理解できない」
「全部聞き取れたのに、結局何を言ってるか分からない」
といった症状が現れます。
日常生活における具体的な例としては
・テレビの音声が字幕やテロップなしでは理解しづらい
・複数人が喋っている状況や、電話のように機械越しの音声だと聞き取れない
・授業や会議の内容を理解しづらく、聞き返しが増える
・早口の人やマシンガントーク、ラジオDJの澱みない会話などについていけない
・口頭で指示されたことをすぐに忘れてしまう
などが挙げられます。
これらの症状における最大の問題点は、周囲の人間に
・努力不足(頑張って話を聞こうとしないだけ)
・性格の問題(いつもボーッとしている)
・単にもの覚えが悪い
と誤解されやすいことです。
そのため「本人が抱える困難」と「周囲からの評価」とのギャップに当事者が苦しみ、結果として社会的に孤立化したり、ストレスの増大で障害が悪化してしまうのです。

<APDかどうかの判断は?>
APDであると診断されるためには専門的な検査を必要としますが、現時点では診断可能な医療機関が少ないのが現状です。
まずは耳鼻科で聴力検査を受け、難聴の有無を確認することから始まります。もし聴力に問題がなく、それでも「聞き取れない」と感じるなら、APDの可能性に関して相談できる専門医を探してみましょう。
<APDは治る?それとも付き合うもの?>
残念ながら、現時点で「治す」ための明確な治療法は確立されていません。
しかし、症状による困りごとを軽減する対策はあります。
日常生活でできる具体的な対策…
環境を整える:
静かな場所で話す/対面でやりとりすることで、聞き取りやすくなります。
周囲の協力を得る:
マスクは外してもらう、ゆっくりはっきり話してもらうなど、小さな工夫が効果的です。
文字の活用:
重要な内容はメモやメールで伝える、会議後に議事録をもらうなど、視覚支援を活用しましょう。
補助機器の利用:
ノイズキャンセリング機能付きイヤホン・補聴援助システムなどを使うことで、特に騒がしい環境での聞き取りが改善します。
聴覚トレーニング:
朗読を聞き取って書き起こす、語彙を増やすなどの訓練によって、聞く力を高めることが期待できます。

APDの困難を軽減するためには、当事者の努力以上に、周囲の理解と配慮が不可欠です。
繰り返しになりますが、決して「話を聞く気がない」という甘えではありません。
「音は聞こえているのに言葉が理解しづらい」状態であり、耳の異常ではなく、問題は耳ではなく音を処理する脳のはたらきにあります。
さらに発達障害などがある場合は、APDの特性を含めた包括的な支援を考えることが重要になってきます。
人と会話をしているとき、テレビを観ているときに
「耳には入ってきているけど、なぜか内容が分からない…」
という違和感を抱いたときは、遠慮なく身近な人達に打ち明けてみてください。
※本文中のデータ・最新情報などは以下のサイトを参考にさせていただきました。
<Wikipedia>
<特選街web>
【聴覚情報処理障害とは】聴力に問題ないのに言葉を聞き取れない「APD」のチェックリストと対策
<聞き取り困難症・聴覚情報処理障害(LiD/APD)>
<マドレクリニック>
聴覚情報処理障害:APD(auditory processing disorder)
<池袋ながとも耳鼻咽喉科>
<あだち耳鼻咽喉科>
聴覚情報処理障害(APD)とは?聞こえているのに聞こえていない原因と対処法
<ファストドクター>